「共有持分を売却して現金化したい」
「共有関係を解消したい」
とお考えではありませんか?
自分の共有持分は売却できます。
ただし、デメリットやトラブルになるケースがあります。
このページでは、共有持分の売却方法やメリット・デメリット、トラブルの解決策などについて、共有不動産のプロが解説していきます。
目次
不動産の共有名義・共有持分とは?
言葉 | 定義 |
共有名義 | 複数人で一つの不動産を所有している状態 |
共有持分 | 共有者それぞれが持っている所有権の割合 |
不動産の共有名義と共有持分の違いについてご案内します。
共有名義とは
「共有名義」とは、一つの不動産を複数人で共有している状態のことです。
一般的に次のようなケースで共有名義にすることが多いです。
- 夫婦や親子、兄弟で不動産を共同購入した場合
- 親族で不動産を相続した場合
なお、不動産の所有権を持つ複数の名義人は、共有者と呼ばれます。
共有持分とは
「共有持分」とは、各共有者が持っている所有権の割合のことです。
共有名義の不動産の権利を、誰がどのくらいの割合で所有しているかを示します。
例えば、夫婦で住宅を購入し所有権を半分ずつとした場合、登記簿には夫婦それぞれの住所・氏名とともに「持分2分の1」と割合が記載されます。
持分の割合は、不動産購入時に各人が負担した費用や、相続したときの割合によって決められます。
共有持分を売却する4つの方法
- 共有者全員での売却
- 他の共有者への売却
- 土地の分筆
- 売却代行業者への委託
共有持分を売却するには、次の4つの方法があります。
【方法①】共有者全員での売却
共有者全員の同意を得て、共有名義の不動産を単独不動産として売却する方法です。
一つの不動産として市場に出されるため、相場価格で売却できるというメリットがあります。
この場合、売却代金は共有持分の割合に応じて分配されます。
ただし、共有名義の不動産を売却する場合は共有者全員の合意が必要となり、一人でも反対する方がいると売却はできません。
【方法②】他の共有者への売却
配偶者や親族など、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらう方法です。
共有持分の売却額を決める際は、双方が納得できる金額になるように話し合いによる調整が必要です。
その際、極端に安い価格で取引すると、買い受けた側に贈与税が課税される可能性があります。
【方法③】土地の分筆
共有名義の不動産が土地のみの場合、分筆後に売却する方法があります。
分筆とは、一つの土地を複数に分割して登記することです。
共有名義の場合、分筆後は各共有者がそれぞれの地番を単独名義で所有することになり、売却が容易になります。
なお、共有者全員の同意が必要となるため、事前の話し合いが必要です。
【方法④】売却代行業者への委託
他の共有者との交渉が難しい場合や売却手続きがよく分からないといった場合、売却代行業者に委託する方法があります。
専門家に一任することで、売却がスムーズに進みます。
共有持分の売却価格(相場)の算出方法
共有持分の売却価格の相場は、不動産全体の市場価格と持分の割合によって決まります。
具体的な計算式は次のとおりです。
「共有持分の売却価格の相場=不動産全体の市場価格×持分の割合」
ただし、この方法はあくまで一般的な方法です。
共有持分の実際の売却価格はさまざまな条件の影響を受けます。
特に売却先が他の共有者なのか、第三者なのかによって、価格は次のように変わります。
- 他の共有者に売却する場合、市場相場に近い価格になる
- 第三者に売却する場合、相場よりも安い価格になる
買取り業者に売却する場合は、かなり安い金額を提示される可能性が高いです。
共有持分を売却する4つのメリット
- 現金化
- 管理負担の軽減
- トラブルの回避
- 特別控除・特例による節税
共有持分を売却すると、この4つのメリットがあります。
【メリット①】現金化
共有持分も立派な不動産ですので、売却することにより、まとまった現金を得ることができます。
自分の持分だけなら、他の共有者の同意が無くても、売却できます。
ただし、市場の価値よりも低い金額となってしまいます。
【メリット②】管理負担の軽減
共有持分を所有し続けると、次の管理負担が発生します。
- 固定資産税
- 修繕費用
固定資産税の税額は、不動産の評価額×1.4%です。
共有持分を売却することにより、これらの管理負担から解放されます。
【メリット③】トラブルの回避
共有名義の不動産では共有者同士のトラブルが生じやすくなります。
例えば、次のような場合です。
- 不動産の利用に関して共有者間で意見が一致しない
- 共有者が行方不明になり連絡がつかない
- 支払われるはずの家賃の未払い
共有持分を売却することで共有関係を解消し、このようなトラブルを避けることができます。
【メリット④】:特別控除・特例による節税
特別控除・特例 | 概要 |
①居住用財産の3,000万円特別控除 | マイホームを売却したときに使える控除。 所有期間に関係なく最高3,000万円まで控除可能 |
②マイホームを売った時の軽減税率の特例 | 長期譲渡所得の税額に通常よりも低い軽減税率を適用できる |
③相続した空き家を売却する時の特例 | 譲渡所得から最高3,000万円が控除できる |
共有持分を売却した際には、節税のためのこのような特別控除や特例を使用できる可能性があります。
控除や特例の適用には、それぞれ一定の要件を満たす必要があります。
詳細は、以下の国税庁のサイトでご確認ください。
参考)国税庁ホームページ「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
共有持分を売却する8つのデメリット
- 売却価格が低くなる
- 他の共有者との関係悪化
- 新たな共有者とのトラブル
- 他の共有者からの売却阻止
- 買い手がつかない
- 単独不動産の売却は難航する
- 税金負担
- 売却後の権利の喪失
共有持分の売却には、次のようなデメリットがあります。
①売却価格が低くなる
共有名義の不動産は次のようなリスクが伴います。
- 共有者の同意を得なければ売却や再利用などができない
- 共有者同士の意見の食い違いなどからトラブルが起きやすい
そのため、共有持分の市場価格は安くなりやすいという傾向があります。
共有持分の売却価格の相場は、市場価格のおよそ5〜7割です。
②他の共有者との関係悪化
自分の共有持分のみの売却では、他の共有者の同意は必要ありません。
ですが、次のような場合、他の共有者との関係が悪化する可能性があります。
- 他の共有者が親族などで付き合いがあるのに知らせずに売却する
- 他の共有者が売却に反対しているのに勝手に売却する
- 新たな共有者の参入に反対しているのに勝手に売却する
売却後も他の共有者との付き合いが続くのであれば、十分なコミュニケーションを取り、相談しながら共有持分の売却を進めるのがおすすめです。
③新たな共有者とのトラブル
自分の共有持分を第三者に売却した場合、購入者が新たな共有者になります。
共有名義に加わった新たな共有者と他の共有者との間で意見がかみ合わず、トラブルになる可能性があります。
④他の共有者からの売却阻止
新たな共有者を望まないといった理由で、他の共有者が共有持分の売却を阻止する可能性があります。
⑤買い手がつかない
先ほどご案内したように、共有持分の購入者は、不動産を活用したくても他の共有者の合意を得る必要があるため、自分の意志だけで自由にすることができません。
共有持分を買いたいというニーズは少なく、購入者を見つけるのはとても難しいのが現状です。
⑥単独不動産の売却は難航する
先ほどもご案内したとおり、共有名義の不動産を単独不動産として売却する場合には、共有者全員の同意が必要です。
共有者が多い場合や共有者間で意見が食い違う場合、売却が難しくなります。
また売却の際、特に問題になるのが価格です。
次のような場合は、難航します。
- 共有者全員が納得する売却価格を決められない
- 共有者間で利益の分配を決められない
⑦税金負担
- 延滞税
- 無申告加算税
共有持分を売却し売却益が出た場合は、確定申告が必要です。
うっかり確定申告を行わなかった場合、延滞税や無申告加算税が課せられます。
① 延滞税
納税期限を過ぎた日数分の延滞税が課され、税率は延滞期間によって異なります。
- 納税期限から2か月間は約7%
- 2か月以降は約14%
延滞期間が長くなるほど税率が高くなるため注意が必要です。
② 無申告加算税
無申告加算税の税率は、納付すべき税額に対して変わります。
- 50万円までは15%
- 50万円を超える部分は20%
ただし、税務調査を受ける前の自己申告により、税率を5%に軽減できます。
こうした税金問題を回避するために、事前に税理士などの専門家に相談しておくのも一つの方法です。
また、売却後に税金を支払うための予算を計画的に確保しておくことも重要です。
共有持分を売却した場合、その売却益は譲渡所得となり、所得税や住民税、復興特別所得税(2037年まで)がかかります。
譲渡所得税は不動産の所有期間によって税率が変わり、5年以内の短期譲渡所得と5年超えの長期譲渡所得の2つがあります。
所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
短期譲渡所得 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
譲渡所得を区分する不動産の所有期間は、売却した年の1月1日時点までの経過年数になります。
なお、譲渡所得税が発生したときには確定申告が必要です。
⑧売却後の権利の喪失
共有持分を売却すると、その土地や建物に対する所有権を完全に失うことになります。
すると、仮に将来的にその資産価値が上昇しても、その恩恵を受けることができなくなります。
また、賃貸物件の場合、家賃などの収益がなくなります。
共有持分の売却時に発生する8つの費用
- 譲渡所得税・住民税
- 登記費用(登録免許税)
- 仲介手数料
- 印紙税
- 相続税
- 引越し費用
- 清掃費用
- その他の費用
共有持分を売却した際には、この8つの費用が発生します。
①譲渡所得税・住民税
先ほどもご案内したとおり、共有持分を売却した場合、売却益は「譲渡所得」となり、金額に応じて次の税金がかかります。
- 所得税
- 住民税
- 復興特別税
②登記費用(登録免許税)
共有持分を売却する際、住宅ローンが残っているなどの理由で不動産に抵当権が付いている場合は、売却までに抵当権を抹消しなければなりません。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産一つあたり1,000円です。
③仲介手数料
共有持分の売却を不動産会社に仲介してもらう場合、成功報酬として仲介手数料が必要です。
仲介手数料は、宅地建物取引業法によって上限額が設定されており、上限額を求める際には「速算式」と呼ばれるこちらの数式を使って算出できます。
売却価格(税抜き) | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下 | 売買価格の5% + 消費税(10%) |
200万円超400万円以下 | 売買価格の4% + 2万円 + 消費税(10%) |
400万円超 | 売買価格の3% + 6万円 + 消費税(10%) |
例えば、1,000万円でマイホームを売却した場合、「1,000万円×3%+6万円=36万円」に消費税(10%)を加えた39.6万円が仲介手数料の上限額です。
④印紙税
印紙税とは、課税対象となる文書を作成したときににかかる税金です。
共有持分の売却の際には、不動産売買契約書に対して課税され、契約書の記載金額によって税額が決定します。
記載された金額 | 税額 |
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 400円 |
50万円を超え100万円以下 | 1千円 |
100万円を超え500万円以下 | 2千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 |
契約金額の記載のないもの (令和6年4月1日現在法令等) |
200円 |
⑤相続税
相続した物件を売却し売却益を得た場合、相続税が発生するケースがあります。
⑥引越し費用
共有名義の物件に居住している場合、自分の持分を売却した後に転居する際は引越し費用が必要です。
⑦清掃費用
転居に際して、清掃費用が必要となる場合があります。
⑧その他の費用
売却に伴い、諸々の費用が発生するケースがあります。
例えば次のような場合、弁護士や税理士、不動産鑑定士に依頼するための費用が必要になります。
- 売却先との間で発生した問題解決
- 売却に伴う税金対策
- 不動産鑑定
共有持分を担保にした融資にご興味のある方は、「共有名義・持分ローン」をご覧ください。
共有持分を売却する7つの手順を分かりやすく解説
- 不動産会社を選ぶ
- 売却価格を決定する
- 買い手を探す
- 売買契約を結ぶ
- 売却代金を受け取る
- 所有権移転登記をする
- 確定申告をする
共有持分を売却する手順について分かりやすく解説します。
なお、自分の持分のみを売却する場合、他の共有者に通知する必要はありません。
①不動産会社を選ぶ
共有持分の売却は不動産全体の売却と異なり、買い手を見つけることが難しい傾向があります。
不動産を売却するには不動産会社に依頼することが一般的です。
ですが、共有持分を売却する場合、一般的な不動産会社に相談しても取り扱ってもらえなかったり、遅々として手続きが進まなかったりといった事態も想定されます。
高く早く売るためには、共有持分の売却に実績のある不動産会社を選ぶことが大切です。
②売却価格を決定する
不動産会社に査定をしてもらい、共有持分の売却価格を決定します。
一般的に売却価格は、次のような要素に左右されます。
- 公示価格
- 路線価
- 固定資産税評価額
- 市場価格
- 過去の取引事例
- 需要と供給のバランス
- 建物の築年数
- 建物の構造
- 立地
- 土地の制限
- 景気の動向
③買い手を探す
共有持分の売却価格が決定したら、不動産会社が買い手を探します。
④売買契約を結ぶ
買い手が見つかったら、売買契約を結びます。
契約書は不動産会社が用意してくれますが、あいまいな点などについては、しっかりと確認することが重要です。
⑤売却代金を受け取る
売買契約の成立後、売却代金を受け取ります。
⑥所有権移転登記をする
代金の決済後、売主から買主へ物件の所有権移転登記を行います。
登記は、司法書士などの専門家に依頼することが一般的です。
⑦確定申告をする
売却益が発生した場合、所得税や住民税の支払いが必要となるため確定申告をします。
共有持分を売却する際に起きる3つのトラブル
- 買主とのトラブル
- 不当に安い評価額(買取り業者とのトラブル)
- 不明瞭な契約内容(買取り業者とのトラブル)
自分の共有持分を売却する際によく起きるトラブルと、それらを防ぐための具体的な方法を解説します。
①買主とのトラブル
共有持分の売却後、契約内容の不明確さや誤解から、買主との間で予期せぬトラブルが生じることがあります。
トラブルを防ぐためには、契約書を細部まで確認し、売却価格などの契約内容を明確にしておくことが重要です。
また売買契約の際は、弁護士の立会いのもと、契約書の読み合わせを行うのも有効です。
②不当に安い評価額(買取り業者とのトラブル)
買取り業者とのトラブルでよく見られるのが、市場価格にくらべて評価額が非常に低くなってしまうケースです。
これは業者が自身の利益を優先し、不動産の市場価格よりも低く評価することが考えられます。
市場価格と大きく乖離している場合は、他の業者にも査定を依頼することをおすすめします。
③不明瞭な契約内容(買取り業者とのトラブル)
買取り業者と結んだ契約書の内容が不明瞭で、後にトラブルに発展することがあります。
特に買取価格や税金などの記載にあいまいな点が多い場合には、注意が必要です。
トラブルを防ぐために、契約書の内容に不明な点がある場合、専門家に確認できる流れになっていることが理想です。
また、判を押す前に契約書の内容を自分自身でしっかり把握しておくことも重要です。
トラブルが起きてしまった時に有効な4つの対策
- 弁護士や司法書士の介入
- 売却の中止
- 調停や仲裁の利用
- 訴訟の提起
共有持分の売却では、さまざまな相手との間でトラブルが生じることがあります。
双方の話し合いによる解決が難しい場合の対策方法についてご案内します。
①弁護士や司法書士の介入
共有持分の売却手続きに詳しい弁護士や司法書士を介入させることで、専門家の立場から事情を整理し、トラブルを解消することができます。
②売却の中止
トラブルによって共有持分の売却手続きが進められない場合、不動産業者と合意できれば売却を中止できます。
キャンセルの費用が発生するかどうかは、不動産業者との契約内容によるので確認が必要です。
③調停や仲裁の利用
調停とは、「調停委員」と呼ばれる有識者が間に入り、双方の言い分を聞き取ったうえで調整を行います。
調停委員は公平な視点で、各当事者が納得できる解決案(調停案)を作成し提示してくれます。
仲裁は、紛争の解決を中立的第三者である「仲裁人」に委ねる解決制度です。
仲裁の結果は法的な拘束力を持つので、調停よりも強制力が強くなります。
売却に関するトラブルが深刻化した場合、調停や仲裁を利用するのも対策の一つです。
④訴訟の提起
話し合いで解決する見込みがない場合や調停が成立しなかった場合には、民事訴訟を提起して解決する方法があります。
弁護士はアドバイスとともに、最善の戦略を立ててくれます。
訴訟を提起する際には、信頼できる弁護士と相談することが重要です。
丸の内AMSは共有持分に特化した不動産担保ローンの会社です。まずは一度、お気軽にご連絡ください。
共有持分の不動産の売却に関するまとめ
不動産の共有名義や共有持分についての基本情報から、共有持分の売却方法や価格の計算方法、メリット・デメリットまで詳しくご紹介しました。
売却にはさまざまな費用やトラブルが伴うこともありますが、しっかりと対策を講じることでスムーズに進められます。
もっと詳しい情報やサポートが必要な方は、ぜひ丸の内AMSまでお気軽にご相談ください。