「土地の共有名義って、メリット、デメリットがあるの?」
「共有名義にしたときの注意点が知りたい」
このように悩んでいませんか?
土地を共有名義にするケースは2パターンあります。
- 土地を夫婦で共有名義にしている
- 共有名義の土地を相続した
このパターンでメリット、デメリットが異なります。
この記事では、土地を共有名義にするメリットとデメリットについてプロがわかりやすくご案内しています。
目次
土地の共有名義とは?
土地の共有名義とは、2人以上の複数人で土地の所有権を登記していることです。
1人で名義人の登記していることを単独名義といいます。
共有名義と似た言葉に、共有持分という言葉があります。
こちらは共有者間で持つ「権利の比率」のことです。
例えばよくある比率は以下のようなものです。
- 2人の共有持分が2/1と2/1
- 2人の共有持分が4/3と4/1
土地が共有名義になる2つのパターン
- 夫婦が土地を共有名義で購入する
- 親の土地を複数の遺族で相続する
土地が共有名義になるパターンは2つあります。
パターン①:夫婦が土地を共有名義で購入する
1つは、土地を夫婦で購入するときに、2人の共有名義で購入するパターンです。
一般的には購入金額で決定して、その比率によって利用権・売却時の収益分配が決まります。
例えば、土地を購入するときに夫が8割出し、妻が2割出したら、夫の持分は8、妻の持分は2です。
パターン②:親の土地を複数の遺族で相続する
もう1つは土地を複数の遺族で相続するパターンです。
相続人が複数いる相続財産では、原則すべての相続人が共有名義人です。
この場合、各相続人の持分は法定相続分にもとづいて決まります。
例えば、母と2人の子で親の土地を相続する場合は、母が1/2で、子は1/4ずつの持分です。
夫婦間で土地(不動産)を共有名義にするメリット・デメリット
土地を夫婦2名で共有名義にした場合のメリットとデメリットをご案内していきます。
土地を夫婦で共有名義にする6つのメリット
- 借入額の増額ができる
- 住宅ローン控除を夫婦がそれぞれ受けられる
- 専業主婦(主夫)でも共有名義にできる
- 相続税の節税ができる
- 売却時に特別控除が受けられる
- 夫婦で団信に加入できる
夫婦間で共有名義にする場合は、6つのメリットがあります。
それぞれご案内していきますね。
メリット①:借入額の増額ができる
一般的に、共働き夫婦は収入先が2つあるため、借入額の限度額は夫婦を合算した金額で決まります。
例えば、夫500万円と妻300万円の年収があるケースでは、合計6,880万円まで借入できます。
- 単独名義と共有名義の借入額の違い
名義 | 年収 | 借入可能額 |
---|---|---|
夫単独 | 500万円 | 4,300万円 |
妻単独 | 300万円 | 2,580万円 |
共有名義 | 夫妻合計800万円 | 6,880万円 |
※借入期間35年
共有名義の場合、金融機関から「返済能力が高い」と判断されるため、単独の場合より、多く借りられます。
その分、より理想に近い物件を手に入れることができます。
メリット②:住宅ローン控除を夫婦がそれぞれ受けられる
住宅ローン控除には1人40万円の上限があります。
夫婦で共有名義にすると、住宅ローン控除は最大で80万円になります。
なお、住宅ローン控除額の計算法は次の通りです。
- 住宅ローン残高×負担割合×1%
- 建物の価格×1/3×2%
①、②の、より小さい方が「住宅ローン控除額」です。
参考)国税庁「住宅借入金等特別控除」
メリット③:専業主婦(主夫)でも共有名義にできる
専業主婦(主夫)でも共有名義にできます。
ただし、一般的に共有名義で購入する際は、金融機関からの借り入れ条件として、夫婦ともに安定した収入があることが必要です。
仕事をしておらず収入が無い場合は、担保が無い状態ですので、そのままでは貸してくれません。
片方の配偶者が連帯保証人となることで解決することが多いですが、預貯金を自己資金として出すことで共有名義にすることができます。
メリット④:相続税の節税ができる
夫婦2人のうち、どちらかが他界した場合、相続税の課税対象は、亡くなった方の所有した持分だけです。
夫と妻で50%ずつの共有持分なら、50%分が相続税の対象となります。
2人で土地を共有している場合、課税対象になる土地が少ないため、相続税額も少なくなります。
メリット⑤:売却時に特別控除が受けられる
特別控除とは、土地を売却した際の譲渡所得から最高3,000万控除できる特例です。
単独名義の場合は3,000万円しか得られません。
ですが、夫婦での共有名義の場合は、2人とも特別控除を受けられるため、合計6,000万円です。
参考)国税庁No.3308 共有のマイホームを売ったとき [令和5年4月1日現在法令等]
メリット⑥:夫婦で団信に加入できる
団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローンを組む際に、任意で加入できる生命保険です。
団信に加入すると、住宅ローンの借主が亡くなった場合に残されたローン残額は保険で返済されます。
例えば、夫が単独名義で住宅ローンを借り、残りが3,000万円のときに亡くなると、その後は住宅ローンを支払わずに済みます。
残り3,000万円は保険で支払われるからです。
共有名義の場合は、夫婦で団信に加入できます。
この場合、住宅ローンの残債が夫:1,500万円、妻:1,200万円のときに、夫が亡くなると夫の分の1,500万円は支払わなくて済みます。
土地を夫婦で共有名義にするデメリット
- 住宅ローンの諸費用が2倍になる
- 専業主婦(主夫)でも支払い義務がある
- 土地の売却には双方の同意が必要になる
- 離婚するときに財産分与が複雑化する
- 片方が他界したとき相続税が発生する
- 相続者が増えて複雑化する
デメリットをご案内していきますね。
デメリット①:住宅ローンの諸費用が2倍になる
諸費用は住宅ローンの借入金額には含まれませんので、先に一括入金します。
自己資金が手元に少ない方にとっては注意が必要です。
住宅ローン諸経費とは、例えば次のような費用のことです。
- ローン契約の手数料
- ローン保証料
- 登記費用
- 印紙税
※ローン諸経費の目安は借入額の3%~8%
例えば、2,000万円を夫と妻がそれぞれに借りたケースで、諸経費率5%の場合は合計200万円です。
借入者 | 借入額 | 諸経費率 | 諸経費額 |
---|---|---|---|
夫 | 2,000万円 | 5% | 100万円 |
妻 | 2,000万円 | 5% | 100万円 |
デメリット②:専業主婦(主夫)でも支払い義務がある
それまで仕事をしていて収入があった人が、子供ができて仕事を辞めたり、リストラされたりして、専業主婦(主夫)になっても、収入の有無に関係なく、夫婦での返済責任が発生します。
将来の計画をある程度考えておかないと、住宅ローンを支払えないという事態になってしまいます。
住宅ローンが支払えなければ、任意売却をしたり、最悪の場合、競売になってしまったりすることがあります。
デメリット③:土地の売却には双方の同意が必要になる
土地を単独名義として売却したい時は、夫婦2名の間での同意が必要です。
夫婦間の意見が合わなければ、希望通りに売却できません。
自分の持分だけを売却することができますが、売却金額は単独名義の場合よりも低くなってしまいます。
デメリット④:離婚するときに財産分与が複雑化する
離婚の際は、「どのように財産を分けるか」について双方の合意が必要です。
夫婦間で意思疎通できない状態であったり、意見が食い違っていたりすると、財産分与に時間や手間がかかってしまいます。
デメリット⑤:片方が他界したとき相続税が発生する
片方が他界したときに、突然、大きい額の相続税の支払いが生じることがあります。
こちらは、夫の持分の土地の評価額が5,000万円の場合の相続税の算出例です。
基礎控除額は3,000万円なので5,000万円-3,000万円=2,000万円
課税遺産総額は2,000万円x1/2=1,000万円
1,000万円x15%(相続税率)=150万円(相続税)
課税対象の土地の基礎控除3,000万円を超える部分に相続税がかかります。
ですので、夫の持分が3,000万円なら、控除(差し引き)されるため、相続税は0円です。
デメリット⑥:相続者が増えて複雑化する
相続が発生すると、関係する相続人が新たに共有者に加わります。
全員で、共有名義の土地の遺産分割を行う必要があります。
共有者が増えると、土地の売却や利用についての意見がまとまりづらいです。
相続した土地を共有名義にするメリット・デメリット
相続した土地を共有名義にするメリットとデメリットをご案内していきます。
相続した土地を共有名義にするメリット
- 相続が公平になる
- 売却時に特別控除が受けられる
- 維持費・諸経費を分割できる
メリットは3つあります。それぞれご案内していきますね。
メリット①:相続が公平になる
相続が発生すると、法的には、土地は相続人全員の共有名義となります。
土地の権利を分ける割合は法的に決まっています。
相続人に一定の収入があり、相続する土地が小さければ、不公平感は出にくいです。
ただ、遺言書があればその通りにする必要があります。
メリット②:売却時に特別控除が受けられる
相続した土地を売却するときに特別控除が適用されます。
-
不動産を売却して得た譲渡所得の金額から、最高3,000万円まで控除されます。
被相続人居住用家屋とその敷地を相続・遺贈で取得した相続人が3人以上の場合、控除額は最大2,000万円です。
税金が大幅に軽減されますので、特に評価額の高額な土地を相続した際は、インパクトが大きいです。
参考)国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却し、一定の要件に当てはまることが条件です。
詳しくは国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご参照ください。
メリット③:維持費・諸経費を分割できる
共有者全員で土地の管理や税金といった諸経費を分割をすれば、個々の負担する費用は軽いです。
共有者の間でコミュニケーションが取りやすい状態なら、トラブルは起こりづらいです。
相続した土地を共有名義にするデメリット
- 全員の同意なく売却できない
- 半数以上の同意なく貸出できない
- 半数以上の同意なくリフォームできない
- 共有者の利用を制限できない
- 他界時に共有者が増える
- 固定資産税は分割されない
- 贈与税がかかる可能性がある
それぞれご案内していきますね。
デメリット①:全員の同意なく売却できない
1つの土地として土地を売却するには、共有者全員の同意が必要です。
共有者が多い場合、意見を一致させるだけで一苦労です。
共有者間で土地利用への考え方が異なるケースは多いです。
例えば、一部の共有者が土地の上にアパートなどの収益物件を建てたいと希望しているが、一部の共有者は「親の残してくれた土地だから…」「うちが住みたい」と反対するといった状況です。
デメリット②:半数以上の同意なく貸出できない
土地を貸し出す場合、半数以上の同意が必要です。
貸出によって出た利益は共有者全員で分けることになります。
共有者の中に「貸出は反対!」という人がいると、難航します。
デメリット③:半数以上の同意なくリフォームできない
リフォームをするときも、半数以上の同意が必要です。
共有者の中に反対する人がいると、リフォームは難航します。
家を壊して建築し直す場合も同様です。
デメリット④:共有者の利用を制限できない
共有者は、自分の持分だけなら、自由に扱えます。
持分の土地を売却したり、持分を担保にしてお金を借りたりすることができます。
共有者がどれだけ反対しても、権利の行使を止めることはできません。
デメリット⑤:他界時に共有者が増える
共有者の1人が他界すると、その相続人が新たに共有者に加わります。
共有者が増えれば増えるほど、全員の意見をまとめることが難しくなります。
人が多ければ多いほど、意見が異る、仲が悪い、連絡が取れないといった状況が生まれます。
なお、他界した人の相続者が未成年者の場合は、法定代理人の同意が必要です。
デメリット⑥:固定資産税は分割されない
共有名義人の数や共有持分の割合に関わらず、固定資産税は一括納付する必要があります。
共有者は持分の割合分の固定資産税を負担することになります。
この状況で、一部の共有者が固定資産税を「支払いたくない」「支払えない」となると、他の共有者がその分を負担することになるため、トラブルの元になります。
事前に、共有者間で固定資産税の分担について合意しておくといった対策が必要です。
デメリット⑦:贈与税がかかる可能性がある
共有者が持分を放棄し、その持分を受け取る場合、税務上は贈与とみなされます。
贈与税は、持分を受け取る側が納める税です。
共有持分が非課税額(年間110万)を超えた場合、超えた分にかかります。
-
共有持分が500万円なら、110万円を引いた390万円が課税対象となります。
この場合の税率は15%ですので58.5万円ですが、控除が10万円ありますので、48.5万円を納めることになります。
具体的な税金については、信頼できる税理士に聞いてみてください。
トラブルを防ぐために!土地の共有名義を解消する3つの方法
- 単独名義にする
- 土地を分筆する
- 離婚時に単独名義に変更する
土地の共有名義にはメリットとデメリットがあることをご案内しました。
「トラブルを防ぎたい」という方は、共有名義を解消することをご検討ください。
土地の共有名義を解消する方法は3つあります。
それぞれご案内していきますね。
方法①:単独名義にする
他の共有者から土地の所有権を譲渡してもらい、1人に集中することで、共有名義の土地を単独名義にすることができます。
単独名義にする方法は2つあります。
- 共有者全員の同意を得て変更する
- 共有持分のみを売却する
それぞれご案内しますね。
共有者全員の同意を得て単独名義に変更する
共有者全員の同意を得ることができれば、単独名義に変更することができます。
全員が問題無くコミュニケーションでき、共有持分の評価額の分のお金が用意できるなら、スムーズです。
必要な手続きは次の通りです。
- 土地の売買契約書の作成
- 新たな登記
法的な手続きを伴うため、弁護士や司法書士に依頼してください。
共有物分割請求を行って単独名義にする
共有物分割請求とは、不動産所有者のうちの一人が、残りの不動産所有者に対して、「不動産を、私一人の名義にさせて欲しい」と申し出る行為のことです。
裁判所に申し立てを行い、認められたら、裁判所が土地の分割を命令します。
次のような場合に実施されます。
- 共有者間で合意が取れない
- 他の共有者から拒否されている
ただし、この方法には注意が必要です。
裁判所が分割を認めないケースがあることと裁判には半年以上の時間と費用、ストレスがかかるということです。
本来は、共有者間で話し合いをして解決することが望ましいのですが、それが難しい場合は、こうした手段が取られることがあります。
方法②:土地を分筆する
土地の分筆とは、土地を分割して登記するということです。
分筆することで、共有名義の土地を単独名義に変更できます。
条件として都市計画法などの法規制に適合している必要があります。
分筆には専門的な知識や手続きが必要ですので、不動産専門家や司法書士に依頼してください。
方法③:離婚時に単独名義に変更する
離婚するにあたって、土地をどちらか一方の単独名義にすることがあります。
どちらか一方の名義に変更するには、夫婦間での合意が必要です。
一般的に、このような場合では、土地の価値に応じて、一方から一定の金額を受け取ります。
例えば、持分が2,500万円ずつで、単独名義にすると5,000万円になるなら、夫婦のどちらか一方が、2,500万円を渡すということです。
共有名義の土地を売却する方法
- 土地(不動産)全体を売却する
- 共有持分のみを売却する
共有名義の土地を売却する方法は2つあります。
それぞれご案内していきますね。
方法①:土地(不動産)全体を売却する
共有者全員の同意を得て、1つの不動産(単独名義)にして売却するという方法です。
この場合の売却金は、それぞれの持分に応じて分配されます。
手続きや所得税が発生しますので、司法書士や税理士と提携している不動産会社に依頼してください。
方法②:共有持分のみを売却
共有名義の土地のうち、自分の持分だけを売却するという方法です。
他の共有者が売却に反対していても、自分の持分だけなら、自由に売却できます。
ただし、売却価格は共有持分割合や土地の価値によって変わります。
またお急ぎで資金が必要な場合は、売却までのつなぎ融資をすることもできます。
お気軽にお問い合わせくださいませ。
「土地の共有名義のメリット・デメリット」のまとめ
土地を共有名義にするケースは、次のパターンに分かれます。
- 土地を夫婦で共有名義にしている
- 共有名義の土地を相続した
メリットとデメリットは、このパターンによって異なります。
共有名義を単独名義にするには、共有者の間で意思疎通が必要です。
「自分の持分だけを売却したい」「自分の持分だけで借りたい」という方は、共有名義・共有持分に特化している丸ノ内AMS株式会社にお声がけください。