「根抵当権と抵当権の違いは何?」
「どちらで資金調達すればいい?」
このように考えていませんか?
このページでは、根抵当権と抵当権の違いについて、プロが分かりやすくご案内しています。
目次
根抵当権とは?そのメリットとデメリットを解説

根抵当権とは、不動産担保ローンを受ける場合に、不動産に設定される抵当権の一種です。
抵当権とは、債務者(借り手)が返済不能になった際、担保不動産の売却代金から債権者(金融機関)が優先的に返済を受けられる権利のことです。
抵当権は1つの債権を担保します。
対して、根抵当権は、極度額の範囲内で不特定の債権を継続的に担保します。
極度額とは、根抵当権で担保できる債権の上限額のことです。
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評価額5,000万円の土地に対して極度額4,000万円で根抵当権を設定した。
物件購入費やリフォーム代、運転資金などを、必要なタイミングで借りることができた。
それでは、メリット・デメリットをご案内します。
根抵当権のメリット
- 柔軟な資金調達が可能
- 借入にかかる手間とコストの削減
先ほどもご案内したように、極度額を上限として何度でも借入を繰り返すことができます。
極度額の範囲内で追加の借入を行う場合、担保設定の契約や登記を改めて行う必要がありません。
そのため、運転資金の確保や突発的な資金需要に、スピーディに対応することができます。
それに登記にかかる次のような費用が発生しません。
- 登録免許税:借入額の0.4%
- 司法書士への依頼料:5~10万円(目安)
根抵当権のデメリット
- 他の金融機関から融資を受けられない
- 担保不動産の売却ができない
根抵当権が付いていると、同じ不動産を担保にして他の金融機関から融資を受けることができませんし、不動産を売却することもできません
担保にしたり、売却したりするには、根抵当権を抹消する必要があります。
そのためには、次のことが必要です。
- 根抵当権が担保する全てのローンを完済すること
- 根抵当権を設定している金融機関から抹消の合意を得ること
しっかりと理解や把握をしていないと、チャンスを逃してしまうことがあります。
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極度額3,000万円と設定し、最初に設備資金を1,000万円借入れた後、運転資金を500万円、さらに追加融資を1,500万円借り入れた。
その後、設備資金の1,000万円を返済したので、借り換えようとしたが、他の借入(運転資金と追加融資)が残っていたため、できなかった。
抵当権のメリットとデメリット

抵当権は特定の1つの債権だけを担保にしているため、該当のローンを完済すると、抵当権の効力は無くなります。
ただし、その不動産を担保にしたり、売却したりするには、設定されている抵当権の登記を抹消する手続きが必要です。
ここからはメリット・デメリットをご案内します。
抵当権のメリット
- 借り換えしやすい
- 追加融資や売却をしやすい
抵当権は特定の債権だけを担保します。
そのローンを完済すれば抹消できるため、借り換えしやすいです。
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評価額5,000万円の不動産があり、A社で金利5%で2,000万円を借入した。
その後、金利3.9%のB社で2,000万円を借入する契約を結んでB社の抵当権を設定し、B社から融資実行を受けてA社の融資を完済し、A社の抵当権を抹消した。
借換えたことで、年間の金利を22万円削減できた。
また、担保余力がある場合、同じ不動産に後順位の抵当権を設定し、他の金融機関から追加融資を受けられます。
他の金融機関は、既存の抵当権で担保される債権を明確に把握でき、資金回収リスクを判断しやすいからです。
それから、ローンを完済して抵当権を抹消すれば、自由に不動産を売却できます。
抵当権のデメリット
- 借入の都度、手間とコストが発生する
- 資金調達までに時間がかかる
手間とコストが発生するのは、新たに借入を行う場合、担保設定の契約や登記を行う必要があるからです。
借入のたびに、登録免許税や司法書士への依頼料が発生します。
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土地を担保に抵当権を設定し2,000万円を借入れ、抵当権の登録免許税8万円(借入額の0.4%)と司法書士の報酬が5〜10万円、金融機関への諸費用がかかった。
完済すると、抵当権抹消登記と司法書士費用1~3万円が発生した。
次に、同じ土地を担保に新たに3,000万円の融資を受けた際、抵当権の登録免許税として12万円、さらに登記を司法書士の報酬が5〜10万円、金融機関への諸費用がかかった。
それから、資金調達までに時間がかかるのは、ローンを完済した後、再び同じ不動産を担保に借入する場合、手続きをやり直す必要があるからです。
具体的なプロセスは次の通りです。
①抵当権の抹消登記
②金融機関と新たな融資契約の締結
③抵当権の設定登記
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土地を担保に抵当権を設定し1,000万円を借入れ、完済後、同じ土地を担保に新たに1,500万円の融資を受けることにした。
既存の抵当権の抹消登記に1週間程度、金融機関との融資契約に1~3週間程度、新たな抵当権の設定登記に1週間程度、合わせて1ヶ月~1ヶ月半程度かかった。
根抵当権と抵当権の6つの違い

根抵当権と抵当権の違いは次の通りです。
| 根抵当権 | 抵当権 | |
|---|---|---|
| ①債権の範囲 | 極度額の範囲内の不特定の債権 | 1つの特定の債権 |
| ②借入時の手続き | 極度額の範囲内で契約・登記不要 | 借入の都度契約・登記必要 |
| ③連帯債務者の登記 | 不可 | 可 |
| ④権利の消滅 | 完済しても消滅しない | 完済すれば消滅 |
| ⑤権利の移転 | 原則として移転不可 (ただし元本確定後は移転可) |
債権が移転すれば、抵当権も移転 |
| ⑥優先弁済の範囲 | 極度額を上限とした元本・利息・遅延損害金(無期限) | 元本と最後2年分の利息・遅延損害金 |
それぞれご案内していきます。
【相違点①】債権の範囲
根抵当権は、極度額の範囲まで、複数の債権をまとめて担保できます。
借り手側からすると、例えば、極度額1億円の範囲で、物件の購入費用や運転資金、設備資金などの複数の借入れができます。
抵当権は、1つの債権だけを担保します。
例えば、運転資金として銀行から1,000万円を借入れたら、別途500万円借りるには、同じ不動産に対して新たな抵当権を設定する必要があります。
【相違点②】借入時の手続き
根抵当権は、極度額の範囲内であれば追加借入のたびに契約や登記を行う必要がありません。
抵当権は借入ごとに新たな契約や抵当権設定登記が必要です。
例えば500万円を追加で借りる場合、期間にして7日~14日、費用にして5万円~15万円の差が出ます。
【相違点③】連帯債務者の登記
連帯債務者とは、主債務者と同等の返済責任を負う人のことです。
根抵当権では連帯債務者を登記することができません。
抵当権では連帯債務者を登記できます。
理由は、根抵当権は債務が不特定で、抵当権は債務が特定されているからです。
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社長と配偶者が共同で所有している物件を担保に、会社の運転資金として2,000万円の融資を受けたいと考えている。
金融機関で「共有物件を担保にする場合は、配偶者を連帯債務者として登記する抵当権での融資になる」と言われた。
頻繁に借りるわけではないので、言われた通り、通常の抵当権で融資を受けた。
【相違点④】権利の消滅
ローンを完済しても、金融機関の根抵当権は消滅できしません。
例えば、極度額1億円の根抵当権で5,000万円を借入れした場合、5,000万円を完済しても、抹消するには元本確定と抹消登記の手続きが必要です。
ですが、抵当権の場合は、ローンを完済すれば消滅できます。
例えば、銀行から5,000万円を借り入れた場合、5,000万円と利息等を完済すると、抹消登記の手続きだけで抵当権を抹消できます。
【相違点⑤】権利の移転
根抵当権を第三者に移転することはできません。
ただし、元本確定後は根抵当権を移転することができます。
元本確定とは、根抵当権が担保する債権の範囲が確定することで、次のようなタイミングで行います。
- 取引を終了したい時
- 根抵当権を抹消したい時
抵当権の場合、債権を第三者へ移転すると、抵当権も移転します。
例えば、土地を担保に、A銀行から3,000万円の融資を受ける場合、抵当権ならA銀行はB銀行へ売却できますが、根抵当権なら売却するには元本を確定させる必要があるということです。
ただし、銀行が債権を売却するケースは稀ですし、仮に売却されても返済先が変わるだけで、返済条件は同じです。
【相違点⑥】優先弁済の範囲
優先弁済権とは、債務者が返済不能になった際、担保不動産を売却して、債権者(金融機関)が他の債権者より先に返済を受けられる権利のことです。
その範囲は、それぞれ次の通りです。
- 根抵当権…元金だけでなく利息や遅延損害金も含め、設定した極度額の範囲
- 抵当権…元金と最後の2年分の利息や遅延損害金
そのため、根抵当権と抵当権とで、借り手側が回収される金額に差が出ることがあります。
例えば、元金2,000万円、3年分の利息・遅延損害金が600万円ある場合、回収される金額に次のような差が出ます。
- 根抵当権…2,600万円全額
- 抵当権…元金2,000万円+最後の2年分400万円=2,400万円
根抵当権と抵当権を選ぶ3つの判断ポイント
- 資金調達の頻度
- 担保不動産の流動性
- 金融機関とのパートナーシップ戦略
それぞれご案内していきます。
【ポイント①】資金調達の頻度
判断する上で重要な理由は、資金調達の手続き負担やコストに影響するからです。
複数回の資金調達が必要になる場合は、根抵当権が適しています。
1回限りの資金調達の場合は、抵当権が適しています。
【ポイント②】担保不動産の流動性
判断する上で重要な理由は、不動産売却時の手続きの負担が異なるからです。
不動産を売却する予定がない場合は、根抵当権が適しています。
担保不動産を将来スムーズに売却したい場合は、抵当権が適しています。
【ポイント③】金融機関とのパートナーシップ戦略
判断する上で重要な理由は、金融機関との関係性に影響するからです。
特定の金融機関との関係を強固にしたい場合は、根抵当権が適しています。
金融機関の借り換えも視野に入れている場合は、抵当権が適しています。
根抵当権と抵当権のどちらにも対応している不動産担保ローンの会社

どちらにも対応している金融機関は次の通りです。
- 東京スター銀行
- りそな銀行
- オリックス銀行
- 楽天銀行
- 住信SBIネット銀行
- 丸の内AMS
- アサックス
- ファンドワン
- AGビジネスサポート
- セゾンファンデックス
銀行とノンバンクの違いは次の通りです。
| 銀行 | ノンバンク | |
|---|---|---|
| 金利 | 低い | 高い |
| 審査 | 厳格 | 柔軟 |
| 融資までのスピード | 3週間~約1ヶ月 | 即日~約1週間 |
| 担保設定 | 根抵当権・抵当権を設定 1番順位のみ |
根抵当権・抵当権を設定 1番順位でなくても可 |
金利の低さを重視する場合は銀行を選び、融資までの時間を重視する場合はノンバンクをご検討ください。
どちらにも対応している銀行5社
| 金利(年利) | 借入限度額 | |
|---|---|---|
| 東京スター銀行 | 1.25~7.75%(変動金利) 2.35~9.30%(固定金利) |
100万円~ |
| りそな銀行 | 3.175~10.300% | 100万円~1億円 |
| オリックス銀行 | 3年固定特約型 4.475% 5年固定特約型 4.875% 変動金利 4.175% |
2,000万円~2億円 |
| 楽天銀行 | 1.93~10.69%(5年見直し) | 100万円~1億円未満 |
| 住信SBIネット銀行 | 3.45~9.40%(変動金利) | 300万円~1億円 |
銀行は金利が低いのですが、審査がとても厳しいです。
創業間もなかったり、ここ数年の業績が厳しかったりすると、審査に落ちてしまいます。
審査に落ちてしまったら、ノンバンクをご検討ください。
どちらにも対応しノンバンク5社
| 金利(年利) | 借入限度額 | |
|---|---|---|
| 丸の内AMS | 3.80%~ | 500万円〜5億円 |
| アサックス | 1.95~7.80% | 300万円~10億円 |
| ファンドワン | 固定金利型 2.99~14.80% 変動金利型 2.99~11.80% |
100万円~5億円 |
| AGビジネスサポート | 固定金利型 2.99~14.80% 変動金利型 2.99~11.80% |
100万円~5億円 |
| セゾンファンデックス | 変動金利 3.15~4.95% 固定金利 4.5~9.9% |
500万円~5億円 |
ノンバンクの審査では、最重要視しているのは担保不動産の価値です。
担保不動産があるなら、まずは一度、審査を受けてみてください。
まとめ
根抵当権について、抵当権と比較しながらご案内しました。
どちらにも対応している金融機関がありますので、審査を受ける前に相談してみてください。


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